キャピタルゲインで稼ぐということ

 投資でお金を増やすという話を語るとき、実は一つの事実が暗黙の了解になっている。それは、「キャピタルゲインによってお金を増やす」ということである。

キャピタルゲインというのは、株や債券などを購入し、その評価額が購入時よりも高くなったときに売却して、その差額で得られる利益のことを指す。現物の株式売買は当然これを目的として実施されるし、表面上はそう見えない投資信託の場合も、運用会社が株や債券を売買して、その運用成績によって資産が変動するという意味では、潜在的キャピタルゲインによる資産の増強を図っていることになる。この「キャピタルゲインを獲得する」という行為が、とにかく難しいのである。

大前提として、特定の株式の値上りを事前に見抜くことは、人知を超えた能力を有していない限り、不可能である。世間の株関係の本では、チャート分析で事前に値上りが分かるとか、しかるべき株式の銘柄を選べば必ず株は上がるというような、無責任で甘い言葉が氾濫している。このような『予言』に類する言葉が当たることももちろんあるのだが、外れることもあるというのが市場の世界での厳然たる事実である。

もちろん、投資をする以上はこれから上がるであろうという見込みの株を選んで買おうとするわけで、ランダムに買っているのではないのだから、外れる確率よりは当たる確率の方が高いだろうという考え方もある。しかし、実際には株式の評価額というのはおおむね日経平均などの大きな経済指標の上下と連動していて、その上下動の幅よりも高い方向に振れている個別の株式を事前に見つけ出すのはじつに困難である。

前回の記事でも書いた東宝の株価を例にとると、ヒット作の『シン・ゴジラ』の公開が7月29日である一方で、この映画公開後の最安値を付けたのは8月30日で約1か月後。そして、もう一つのヒット作『君の名は』が公開されたのは8月26日である。『シン・ゴジラ』がヒットしているという情報はおそらくお盆前後には流れ始めているとは思うが、この時点でこの映画のヒットが東宝の株価の伸びに直結するという読みをして、すぐに株を購入すれば、その後の値上りによるキャピタルゲインを獲得できたかもしれない。しかし、1年間に数えきれないほどの映画を配給している東宝の株価が、『シン・ゴジラ』が多少ヒットしたからといって、そこから株の値上りを期待してすぐに購入するというのは、おそらく8月の下旬の時点では簡単なことではなかったように思われる。

この例のように、結果だけを見れば「なぜあの時あの会社の株を買わなかったんだろう」と思ってしまう事例でも、実際に値上り前のいいタイミングで株を買えるかという話になると、非常に心もとない。そのくらい、絶妙なタイミングで値上り前の株式を購入するのは難しいことである。

また、値上りする株式を見極める難しさに加えて、すでに書いたとおり、株が値上りしたときのメンタルのコントロールがまた難しい。例えば、株の購入時の価格よりも20%値上りしたら売却しようと決めて運用するとしよう。そもそも20%も値上りするというのがかなりのレアケースであるため、せっかく株式の評価額が上がっても、10%程度まで値上がりすると売りたくて仕方なくなってしまい、大体が我慢できずに売ってしまう。一方で、当初の予定通り20%の値上りが実現するまで待っていると、値上り率が15%程度まで値上がりしたもののその後反落してしまい、結局キャピタルゲインを得られないということも発生し得る。売却のラインを10%や5%まで下げてしまうと、値上り益の確保という観点での成功率は高くなるが、その分得られるリターンは確実に小さくなる。結局、手数料や税金を差し引いたら、実質的な利益はごくわずかということになり兼ねない。

(以後、次回の記事でこの話を続けることにする)